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特集
対ドローン(C-UAS)の技術と課題 探知・識別・無力化と「費用の非対称」
安価な無人機の大量使用で、防ぐ側の負担が急に重くなった。レーダーや電波による探知から、電波妨害、機関砲、レーザー、迎撃用ドローンまで、対ドローンの仕組みと、法律・費用・誤認の課題を整理する。
STRATTACT編集部
FEATURE / C-UAS
対ドローン(C-UAS:Counter-Unmanned Aircraft Systems)は、敵対的な、または違法な無人機を見つけ、何かを確かめ、必要なら無力化するための技術と運用の総称だ。戦場の防空だけでなく、空港・原子力発電所・競技場・刑務所などの施設の警備、国境の監視でも使われる。この特集では仕組みの概要と課題を扱い、特定の機器の性能や運用の詳細には立ち入らない。
なぜ難しいのか
- 小さく、低く、遅い:小型の無人機はレーダーに映る面積が小さく、鳥と見分けにくい。低い高度を飛ぶと地形や建物に隠れる。
- 数が多い:一度に多数が来ると、一つずつ対処する仕組みは飽和する。
- 安い:数百ドルから数万ドルの機体を、1発で数十万〜数百万ドルの迎撃ミサイルで落とすと、守る側が費用で不利になる。紅海では、米英などの艦船がフーシ派の無人機を高価な艦対空ミサイルで迎撃する状況が続き、この「費用の非対称」が広く議論された。
- 変化が速い:周波数を変える、光ファイバーで操縦する、自律的に飛ぶなど、対策をかわす工夫がすぐに現れる。
探知と識別
一つのセンサーで全部を見ることは難しく、複数を組み合わせるのが一般的だ。
- レーダー:天候や昼夜に左右されにくい。小型機の探知に合わせた短距離のレーダーが使われる。
- 電波の探知(RF センサー):操縦や映像の電波を受信して、機体や操縦者のおおよその位置を推定する。電波を出さない機体(自律飛行や光ファイバー操縦)には効かない。
- カメラ・赤外線:機体を目で確かめ、種類を識別する。AI による画像認識で、鳥などとの見分けを自動化する取り組みが進む。
- 音響センサー:プロペラの音で探知する。距離は短いが安価に広く置ける。
- リモートID:民生の機体が発信する登録番号や位置を受信する。正規の機体と不審な機体を分けるのに役立つ。
無力化の方法
- 電波妨害(ジャミング):操縦や衛星測位の電波を妨げ、機体を着陸させたり引き返させたりする。もっとも広く使われるが、周りの通信にも影響する。
- なりすまし・乗っ取り:偽の信号を送って制御を奪う技術もあるが、対象の機種が限られる。
- 物理的な捕獲:ネットを撃ち出す、迎撃用のドローンで捕らえるなど。
- 機関砲・迎撃ミサイル:軍事では、機関砲や短距離の対空ミサイルで撃墜する。費用を抑えるため、安価な誘導ロケットや、迎撃専用の小型ドローンの導入が各国で進む。ウクライナでは、ロシアのシャヘド型無人機を迎撃するドローンが使われていると報じられている。
- 指向性エネルギー:高出力レーザーや高出力マイクロ波(HPM)。1回あたりの費用が小さいことが利点とされ、英国、イスラエル、米国などが開発・配備を進めていると発表している。天候や射程の制約がある。
日本の制度と取り組み
日本では、小型無人機等飛行禁止法(2016年施行)が、国会・首相官邸などの重要施設、外国公館、防衛関係施設、空港、原子力事業所などの周辺上空での小型無人機の飛行を原則として禁止し、違反した機体に対して警察官や自衛官などが飛行の妨害や機器の破損などの措置をとれると定めている。一方で、電波を使った妨害は電波法との関係で使える主体や場面が限られる。
防衛省は令和9年度(2027年度)概算要求で、誘導弾・機関砲・レーザーを組み合わせ、低コストで大量に投入される無人機を含む経空脅威に対処する能力の強化と、基地の警備のための「ドローン対処器材」の導入(38億円+事項要求)を挙げている。
課題
- 誤認と巻き添え:民間機や正規の業務用ドローン、鳥を誤って対処するおそれ。撃墜した機体や破片の落下による被害。
- 法律と権限:誰が、どこで、どの手段を使えるか。平時の警備と、有事の防空とで権限が異なる。
- 費用:守る範囲が広がるほど、センサーと対処手段の数が膨らむ。安価な手段の組み合わせ(多層防御)が基本とされる。
- いたちごっこ:対策と、それをかわす工夫が短い周期で入れ替わるため、ソフトウェアの更新や機材の入れ替えを速くする仕組みが要る。
STRATTACTの見方
対ドローンは、一つの「決め手」の装置で解決する問題ではなく、探知・識別・判断・対処を組み合わせ、費用と法律の制約の中で運用する仕組みづくりだ。ニュースで新しい装置の発表を読むときは、何を想定した対処か(小型の FPV か、長距離の一方向攻撃型か、群れか)、1回あたりの費用、誤認を防ぐ手順に注目したい。
参考: 防衛省「令和9年度概算要求の概要」(ドローン・スウォーム攻撃等対処能力、ドローン対処器材)、警察庁「小型無人機等飛行禁止法関係」、Wikipedia「Red Sea crisis」(2026年10月17日閲覧)
STRATTACT編集部が公開資料をもとにまとめました(2026年10月17日更新)。AIを記事の執筆の補助で使用しています。
この記事の用語
- C-UAS(対ドローン)
- 敵対的・違法な無人機を見つけ、識別し、無力化する技術と運用の総称。
- 統合防空ミサイル防衛(IAMD)
- 航空機・巡航ミサイル・弾道ミサイル・無人機などの空からの脅威に、センサーと迎撃手段を一体として対処する考え方。
- 紅海危機
- 2023年11月以降、イエメンの武装組織フーシ派(自称アンサール・アッラー)が、ガザでの戦争を理由に紅海・アデン湾を通る商船や、イスラエルを無人機とミサイルで攻撃している事態。
- 光ファイバー誘導ドローン
- 無線ではなく、繰り出した細い光ファイバーのケーブルで操縦と映像の送受信を行うドローン。
- GNSS(衛星測位)
- GPS(米国)、ガリレオ(EU)、グロナス(ロシア)、北斗(中国)、みちびき(日本)などの衛星で位置を知る仕組みの総称。
- シャヘド(ゲラン)
- イランが開発した一方向攻撃型無人機のシリーズ。
- 高出力マイクロ波(HPM)
- 強いマイクロ波で電子回路を壊したり誤作動させたりする装置。
- 高出力レーザー
- 強いレーザー光を当てて無人機などを焼き壊す装置。
- 小型無人機等飛行禁止法
- 国の重要な施設、外国公館、防衛関係施設、空港、原子力事業所などの周辺の上空で、小型無人機の飛行を原則として禁止する日本の法律(2016年施行)。
- 一方向攻撃型無人機(OWA-UAV)
- あらかじめ決めた地点まで長い距離を飛び、そこで爆発する安価な無人機。
- FPV ドローン
- 機体のカメラ映像をゴーグルなどで見ながら操縦する小型ドローン。
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