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ドローンが変えた戦争 ナゴルノ・カラバフからウクライナ、紅海、中東まで

安価な無人機は、偵察から攻撃、防空の飽和まで、この6年ほどで戦争のあり方を大きく変えた。主な紛争で何が起きたかを、公開された発表と報道、研究機関の分析をもとに整理する。

STRATTACT編集部

DRONE WAR

FEATURE / DRONE WAR

軍用の無人機そのものは新しくない。1990年代から米国は偵察用の無人機を使い、2000年代にはアフガニスタンやイラク、パキスタンなどで、武器を積んだ MQ-1 プレデターや MQ-9 リーパーによる攻撃を行った。ただ、この時期の無人機は高価で、制空権を握った側だけが使える道具だった。

2020年代に入って変わったのは、無人機が「安く、大量に、どちらの側にも」使われるようになったことだ。民生用の部品と技術の進歩、トルコやイランなど新しい輸出国の登場、そして長期化した戦争での工夫が重なり、無人機は偵察・砲撃の誘導・攻撃・後方の施設への長距離攻撃・防空の飽和と、ほぼすべての場面に入り込んだ。

2020年 ナゴルノ・カラバフ:「無人機が勝敗を分けた」とされた戦争

2020年9月27日から11月10日までの44日間、アゼルバイジャンとアルメニア(およびナゴルノ・カラバフの自称共和国)の間で戦闘が続いた。アゼルバイジャンはトルコ製のバイラクタル TB2 やイスラエル製の徘徊型弾薬を大量に使い、アルメニア側の戦車・火砲・短距離の防空システムに大きな損害を与えたとされる。多くの分析が、無人機の広い使用を勝敗を左右した要因の一つに挙げている。

一方で、アゼルバイジャン側の無人機も一部は撃墜されている。古い防空システムしか持たない相手に、中高度を飛ぶ無人機がどこまで通用するかという条件つきの成功だったという見方もある。この戦争は、比較的小さな国でも、輸入した無人機で大きな効果を上げられることを示した例として、各国の軍の研究対象になった。

2022年以降 ウクライナ:数百万機の小型無人機の戦争

2022年2月にロシアが全面侵攻を始めた当初、ウクライナは TB2 を使って注目されたが、ロシアの防空と電子戦が整うと、中高度の無人機は活動しにくくなった。代わって主役になったのが、民生のドローンを改造した小型機と、ゴーグルを着けて操縦する FPV ドローンだ。偵察用の小型機が砲撃の着弾を観測し、FPV が車両や陣地を直接攻撃する。前線の数キロから十数キロの範囲は、常に無人機に見られている状態になったと、双方の兵士や記者が伝えている。

無人機の多くが電波で操縦されるため、電波妨害(ジャミング)が広く使われ、それに対して周波数を変える、自律的に目標を追う機能を持たせる、光ファイバーで操縦するといった工夫が次々に現れた。光ファイバーで誘導するドローンは妨害を受けにくく、2024年ごろから前線で使われるようになったと報じられている。

長距離の攻撃でも無人機が中心になった。ロシアはイラン設計のシャヘド136 を国内で「ゲラン2」として生産し、ウクライナの都市やエネルギー施設への攻撃に使っている。ウクライナ空軍は2025年9月、一晩で800機を超える無人機が発射されたと発表した。ウクライナも自国製の長距離無人機でロシア国内の石油施設や軍の飛行場を攻撃しており、ロシア国防省は連日、多数の無人機を撃墜したと発表している。2025年6月1日には、ウクライナ保安庁(SBU)がトラックに隠して運び込んだ無人機でロシアの5つの空軍基地を攻撃する作戦(「クモの巣」作戦)を行った。ウクライナ側は117機を使ったとし、米当局者はロイター通信に約20機の軍用機が被害を受けたと述べた。

海でも、ウクライナは爆薬を積んだ無人水上艇(USV)で黒海のロシア艦船を攻撃したと発表し、ロシア黒海艦隊はクリミアの基地から艦船を移したと報じられている。地上では、補給や負傷者の搬送に無人地上車両(UGV)を使う例も増えている。

SIPRI は、ロシアが高価な航空機や装甲車両の損失を補う形で、安価な兵器、とくに無人機の大量調達に移ったと分析している。

2023年以降 紅海:海上交通への無人機とミサイル

イエメンの武装組織フーシ派は、2023年11月以降、ガザでの戦争を理由に、紅海・アデン湾を通る商船やイスラエルに無人機とミサイルを向けた。多くの海運会社がスエズ運河を避け、アフリカ南端の喜望峰回りに航路を変えた。米英などの艦船は、1機数万ドルとされる無人機を、1発数百万ドルの迎撃ミサイルで撃ち落とすことになり、「費用の非対称」が広く議論された。

2024〜2026年 中東:国家間の大規模な無人機・ミサイル攻撃

2024年4月、イランはイスラエルに向けて300を超える無人機とミサイルを発射した。イスラエル軍は、米英などの協力でその大半を迎撃したと発表した。2025年6月のイスラエルとイランの「12日間戦争」、2026年2月に始まった米国・イスラエルとイランの戦争でも、イランは無人機と弾道ミサイルを組み合わせて攻撃し、湾岸諸国の施設やホルムズ海峡を通る船舶にも被害が出たと報じられている。安価な無人機を大量に飛ばして防空の迎撃ミサイルを消耗させる使い方は、国家間の戦争でも主要な手段になった。

何が変わったのか

  • 見られずに動くことが難しくなった:前線の上空に常に小型の無人機がいるため、部隊や車両の集結が難しくなり、陣地の分散や偽装が重視されるようになった。
  • 費用の構図が変わった:数百ドルから数万ドルの無人機が、はるかに高価な装備や施設に損害を与えうる。迎撃する側は、安価な対処手段(電子戦、機関砲、レーザーなど)をそろえる必要に迫られている。
  • 開発の速さが勝負になった:民生の部品とソフトウェアで改良を重ね、数週間から数か月で新しい機体や対策が現れる。各国は調達の仕組みを、少量の高価な装備を長い年月で買う形から、大量の安価な装備を早く入れ替える形へ変えようとしている。
  • 自律化への圧力:電波妨害で操縦が途切れても任務を続けられるよう、目標の追跡などを機体が自分で行う機能が広がっている。人の判断をどこまで残すかは、国際的な議論の焦点になっている(特集「自律型致死兵器システム(LAWS)をめぐる国際議論」)。

日本への影響

防衛省は、令和9年度(2027年度)概算要求の資料で、無人アセットを使って「人的損耗を局限しコスト優位を実現」し、「世界一無人アセットを駆使する組織」への変革を目指すとしている。安価で大量の無人機を組み合わせた沿岸防衛の構想「SHIELD」や、ドローンの群れ(スウォーム)による攻撃への対処能力の強化も盛り込まれた(特集「日本の防衛とドローン」)。

STRATTACTの見方

無人機の「戦果」の数字は、戦争の当事者が発表するものがほとんどで、独立した検証は難しい。この特集でも、数字は発表した組織の名前と合わせて示した。無人機が戦争のあり方を変えたことは多くの分析で一致しているが、無人機だけで戦争の勝敗が決まるわけではなく、砲兵・防空・電子戦・兵站と組み合わさって効果を持つことにも注意が必要だ。

参考: Wikipedia「2020 Nagorno-Karabakh war」(2026年10月17日閲覧)、Wikipedia「Operation Spiderweb」、Wikipedia「Red Sea crisis」、SIPRI Fact Sheet: Trends in World Military Expenditure, 2025、防衛省「令和9年度概算要求の概要」

STRATTACT編集部が公開資料をもとにまとめました(2026年10月17日更新)。AIを記事の執筆の補助で使用しています。

この記事の用語

統合防空ミサイル防衛(IAMD)
航空機・巡航ミサイル・弾道ミサイル・無人機などの空からの脅威に、センサーと迎撃手段を一体として対処する考え方。
徘徊型弾薬(ロイタリング・ミュニション)
目標の上空付近を一定時間飛び回り、目標に突入して弾頭を起爆させる無人機。
FPV ドローン
機体のカメラ映像をゴーグルなどで見ながら操縦する小型ドローン。
電子戦(EW)
電磁波を使って相手の通信・レーダー・測位を妨げたり、自分の利用を守ったりする活動。
光ファイバー誘導ドローン
無線ではなく、繰り出した細い光ファイバーのケーブルで操縦と映像の送受信を行うドローン。
ジャミング(電波妨害)
強い電波を出して、無人機の操縦や映像の通信、衛星測位の信号を受け取れなくすること。
シャヘド(ゲラン)
イランが開発した一方向攻撃型無人機のシリーズ。
UGV(無人地上車両)
人が乗らずに地上を走る車両。
USV(無人水上艇)
人が乗らずに水上を走る船。
クリミア
黒海に突き出た半島。
SIPRI(ストックホルム国際平和研究所)
1966年にスウェーデンで設立された研究所。
紅海危機
2023年11月以降、イエメンの武装組織フーシ派(自称アンサール・アッラー)が、ガザでの戦争を理由に紅海・アデン湾を通る商船や、イスラエルを無人機とミサイルで攻撃している事態。
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