トップ / 特集 / 日本の防衛とドローン 防衛力整備計画・予算・SHIELD 構想を公開資料で読む
特集
日本の防衛とドローン 防衛力整備計画・予算・SHIELD 構想を公開資料で読む
日本は2023年度からの5年間で防衛力を大きく強化する計画を進め、無人機(無人アセット)を重点分野の一つにしている。防衛関係費の推移、無人アセットの事業、2027年度の概算要求と三文書の改定の動きを、防衛省・財務省の公開資料をもとに整理する。
STRATTACT編集部
FEATURE / JAPAN
日本政府は2022年12月16日、「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」のいわゆる三文書を閣議決定した。防衛力整備計画は、2023〜2027年度の5年間の防衛力整備の水準をおおむね43兆円程度とし、それまでの計画(5年間で約27兆円)から大きく増やした。重点とする7つの分野の一つが「無人アセット防衛能力」で、計画では5年間でおよそ1兆円を充てるとしている。
防衛関係費の推移
財務省の資料によると、当初予算の防衛関係費(SACO 関係経費・米軍再編関係経費などを含む)は、2022年度の5兆4005億円から、2023年度6兆8219億円、2024年度7兆9496億円、2025年度8兆7005億円、2026年度9兆353億円(前年度比3.8%増)と増えた。グラフは「データ」に載せている。
国際比較では、SIPRI は日本の2025年の軍事支出を622億ドル(世界10位)、対GDP比1.4%と推計し、1958年以来の高い水準としている。日本政府が発表する「防衛関係費」と SIPRI の「軍事支出」は範囲が違う点に注意が必要だ。政府は、海上保安庁の予算や公共インフラの整備などを含めた安全保障関連の経費を、2027年度に GDP の2%にする目標を掲げてきた。
無人アセット防衛能力
防衛力整備計画は、無人機(UAV)・無人水上艇(USV)・無人潜水機(UUV)・無人地上車両(UGV)などを、情報収集や警戒監視、防衛に使い、人員の不足や危険な任務の負担を補うとしている。これまでに、次のような導入が進んでいる。
- 高高度の偵察:航空自衛隊は RQ-4B グローバルホークを三沢基地に配備した。
- 海上の監視:海上保安庁は MQ-9B シーガーディアンを使った海洋監視を行っており、海上自衛隊も MQ-9B の取得を進めている。
- 小型の無人機:陸上自衛隊などが、偵察用・攻撃用の小型無人機の取得や試験を進めている。
SHIELD(多層的沿岸防衛体制)
2026年度(令和8年度)予算では、安価で大量の UAV・USV・UUV を組み合わせて沿岸を守る「多層的沿岸防衛体制(SHIELD)」の構築に1001億円が計上された(概算要求の段階では1287億円)。防衛省の説明では、近距離の偵察用の FPV 型 UAV、艦艇への対処用やレーダーサイトの防護用の UAV、小型の多用途 UUV などを取得する。同じ予算では、広域の情報収集用の UAV の取得(111億円)も計上されている。
2027年度(令和9年度)概算要求
防衛省が2026年8月31日に公表した2027年度の概算要求は、防衛力整備計画にもとづく事業として歳出ベースで約9兆円、契約ベースで約8兆円を求め、三文書の改定によって内容が変わりうる事業は金額を示さない「事項要求」とした。政府は2026年中に三文書を改定する方針を示している。
資料は、AI と無人アセットを「新しい戦い方」への対応の柱に挙げ、無人アセットを使って「人的損耗を局限しコスト優位を実現」し、「世界一無人アセットを駆使する組織」への変革を目指すとしている。主な事業として、情報収集・警戒監視・目標の把握のための UAV の取得、目標情報収集用の無人機の取得(113億円)、低コストのスタンド・オフ防衛用 UAV の開発(事項要求)、次期戦闘機と連携する無人機の研究開発(97億円+事項要求)、基地の警備のためのドローン対処器材の導入(38億円+事項要求)、ドローンのスウォーム攻撃などへの対処能力の強化などを挙げている。
防衛産業と輸出
政府は2023年に防衛生産基盤強化法を施行し、装備品の生産・技術の基盤を支える仕組みを整えた。2026年4月には防衛装備移転三原則の運用指針を改め、完成品の輸出を非戦闘目的に限っていた「5類型」を撤廃した(特集「主要国のドローン産業と輸出規制」)。防衛省は、スタートアップ企業など民生の技術を早く取り入れることも課題に挙げている。
課題
- 量と速さ:ウクライナなどの戦訓は、安価な無人機を大量に、早く入れ替え続ける必要を示している。年度ごとの予算と長い調達の手続きとの整合が問われる。
- 国内の生産基盤:小型無人機の部品は海外、とくに中国への依存が大きいとされ、供給の安定と安全の確保が課題になる。
- 人材と訓練:無人機を操る要員の育成、訓練の空域や電波の確保。
- 法制度:平時の警備や、民間の空域・電波との調整。
- 財源:防衛費の増額の財源について、増税の時期を含めた議論が続いている。
STRATTACTの見方
日本の防衛予算は、金額の大きさだけでなく、何に使われるかの構成が変わりつつある。無人アセットの事業は、全体の予算の中ではまだ小さいが、概算要求の資料の書きぶりからは優先度が上がっていることがうかがえる。年末の予算案と三文書の改定で、計画の金額や重点がどう変わるかに注目したい。
参考: 防衛省「防衛力整備計画」(2022年12月16日閣議決定)、財務省「ファイナンス」2026年5月号「令和8年度 防衛関係予算について」、防衛省「令和9年度概算要求の概要」(2026年8月31日)、SIPRI Fact Sheet「Trends in World Military Expenditure, 2025」
STRATTACT編集部が公開資料をもとにまとめました(2026年10月17日更新)。AIを記事の執筆の補助で使用しています。
この記事の用語
- 無人アセット防衛能力
- 防衛力整備計画が重点を置く7分野の一つ。
- 防衛力整備計画
- 日本の防衛力を5年程度でどう整えるかを定めた計画。
- 軍事負担(対GDP比)
- 軍事支出が国内総生産(GDP)に占める割合。
- SIPRI(ストックホルム国際平和研究所)
- 1966年にスウェーデンで設立された研究所。
- 軍事支出(国防費)
- 国が軍事に使う支出。
- UGV(無人地上車両)
- 人が乗らずに地上を走る車両。
- USV(無人水上艇)
- 人が乗らずに水上を走る船。
- UUV(無人潜水機)
- 人が乗らずに水中を進む機器。
- UAV(無人航空機)
- 人が乗らずに飛ぶ航空機の総称。
- SHIELD(多層的沿岸防衛体制)
- 安価で大量の UAV・USV・UUV を組み合わせて沿岸を守るという防衛省の構想。
- FPV ドローン
- 機体のカメラ映像をゴーグルなどで見ながら操縦する小型ドローン。
- スウォーム(群制御)
- 多数の無人機が互いに通信しながら、まとまって一つの任務を行うこと。
ほかの特集
特集の一覧FEATURE
ドローンが変えた戦争 ナゴルノ・カラバフからウクライナ、紅海、中東まで
安価な無人機は、偵察から攻撃、防空の飽和まで、この6年ほどで戦争のあり方を大きく変えた。主な紛争で何が起きたかを、公開された発表と報道、研究機関の分析をもとに整理する。
STRATTACT編集部
FEATURE
無人機の種類と分類 大きさ・飛び方・任務・自律性で見る
手のひらに乗る小型機から、旅客機ほどの翼を持つ高高度の偵察機まで、「ドローン」と呼ばれるものの幅は広い。米軍・NATO の分類、機体の形、任務、自律性の段階と、日本の制度上の区分を整理する。
STRATTACT編集部
FEATURE
対ドローン(C-UAS)の技術と課題 探知・識別・無力化と「費用の非対称」
安価な無人機の大量使用で、防ぐ側の負担が急に重くなった。レーダーや電波による探知から、電波妨害、機関砲、レーザー、迎撃用ドローンまで、対ドローンの仕組みと、法律・費用・誤認の課題を整理する。
STRATTACT編集部
FEATURE
フィジカルAIとは ロボット・自動運転・無人機を動かすAIと、産業・防衛での使われ方
文章や画像を作るAIの次に、現実の世界で体を動かすAIが注目されている。フィジカルAIの仕組み、ヒューマノイドや物流・製造での実用化の状況、防衛分野での使われ方と論点をまとめる。
STRATTACT編集部