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世界の軍事費と防衛産業 SIPRI のデータで見る2025年
世界の軍事支出は2025年に2兆8870億ドルとなり、11年連続で増えた。どの国が、どれだけ、どのくらいの割合を軍事に使っているのか。SIPRI の最新の発表をもとに、地域ごとの動きと武器の移転、防衛産業の状況を整理する。
STRATTACT編集部
FEATURE / MILEX
ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は毎年4月、前年の世界の軍事支出のデータを発表している。2026年4月の発表によると、2025年の世界の軍事支出は実質2.9%増の2兆8870億ドルで、11年連続の増加となり、SIPRI の記録で最高になった。過去10年(2016〜25年)では41%増えている。軍事支出が世界の国内総生産(GDP)に占める割合は2.5%で、2009年以来の高さだった。
各国の金額の一覧とグラフは「データ:各国の国防予算」にまとめている。
軍事支出とは何か
SIPRI の「軍事支出」は、各国政府が発表する国防予算とは範囲が違う。軍の人件費・装備・研究開発・運用に加え、準軍事組織、軍人の年金、他国への軍事援助なども含めて推計する。このため、日本の「防衛関係費」や NATO の集計とは数字が一致しない。中国・ロシア・サウジアラビアなどは公表される情報が限られ、SIPRI の推計値になっている。
上位の国
2025年の上位5か国は米国・中国・ロシア・ドイツ・インドで、合わせて世界の58%を占めた。
- 米国:9540億ドル(前年比7.5%減)。前年までの補正予算による他国への軍事援助(ウクライナ向けなど)がなくなったことが主な理由とされる。それでも世界の3分の1を占める。
- 中国:推計3360億ドル(7.4%増)。31年連続の増加で、SIPRI のデータベースで最も長い。
- ロシア:推計1900億ドル(5.9%増)。GDP の7.5%、政府支出の20%に当たり、SIPRI がロシアについて記録した中で最も高い割合。国防予算のうち内訳を公表しない「秘匿」部分が約79%に増えたと SIPRI は指摘している。
- ドイツ:1140億ドル(24%増)。対GDP比は2.3%で、1990年以来初めて2%を超えた。
- インド:921億ドル(8.9%増)。2025年5月のパキスタンとの武力衝突で支出が増えたとされる。
ウクライナは推計841億ドル(20%増)で世界7位、GDP の40%に当たる。日本は622億ドル(9.7%増)で世界10位、対GDP比1.4%は1958年以来の高さと SIPRI はしている。
地域ごとの動き
- 欧州:14%増の8640億ドルで、SIPRI の記録で最高。ポーランド(23%増)、スペイン(50%増)、イタリア(20%増)など、多くの国で大きく増えた。
- アジア・オセアニア:8.1%増の6810億ドル。2009年以来の大きな伸び。台湾は14%増で、少なくとも1988年以来最大の伸びとされる。
- 中東:推計2180億ドル(0.1%増)。不確かな推計とされ、いくつかの国のデータが含まれていない。
- アフリカ:8.5%増の582億ドル。
- 米州:6.6%減の1兆650億ドル。米国の減少による。
NATO の新しい目標
NATO の加盟国は2025年6月、国防費の目標を「2035年までに GDP の5%」に引き上げることで合意した。うち3.5%を中核的な軍事支出に、残り1.5%をインフラの防護や防衛産業の基盤などの「防衛・安全保障関連の支出」に充てるとしている。SIPRI は、この1.5%の範囲がはっきりせず、軍事と関係の薄い支出が数えられるおそれがあると指摘している。2025年の NATO 加盟32か国の軍事支出は1兆5810億ドルで、世界の55%だった。
武器の移転
SIPRI の2026年3月の発表によると、2021〜25年の主要な武器の国際的な移転の量は、2016〜20年より約9%多かった。欧州の輸入が大きく増え、ウクライナは2021〜25年に世界最大の武器の輸入国だった。米国の輸出は2016〜20年より27%増え、世界の輸出の42%を占めた。SIPRI は武器の移転の量を、金額ではなく独自の「トレンド指標値(TIV)」で比べている。
防衛産業
需要の増加を受けて、各国の防衛産業は弾薬・防空ミサイル・無人機などの増産を進めている。SIPRI の調べでは、世界の大手100社の武器などの売上は2024年に前年比5.9%増の6790億ドルだった。一方で、部品や原材料の供給の制約、人材の不足、生産設備の拡張にかかる時間が課題になっている。ロシアは制裁を受けながら第三国経由で部品を調達し、無人機の国内生産を拡大していると SIPRI は分析している。
無人機の分野では、米国・イスラエル・中国・トルコ・イランが主要な輸出国になったほか、ウクライナでは多数の新しい企業が小型無人機や長距離無人機を開発・量産している。輸出管理の仕組みは「主要国のドローン産業と輸出規制」で扱う。
STRATTACTの見方
軍事支出の金額は、為替レートや物価の違いで国どうしの比較が難しく、とくに推計値の国は幅を持って見る必要がある。増減を見るときは、名目の米ドルの金額と、物価の影響を除いた実質の増減率を分けて読みたい。SIPRI のデータは研究・報道で広く使われているが、各国政府の発表とは範囲が違うことも覚えておきたい。
参考: SIPRI Fact Sheet「Trends in World Military Expenditure, 2025」(2026年4月)、SIPRI Fact Sheet「Trends in International Arms Transfers, 2025」(2026年3月)、SIPRI Military Expenditure Database、World Bank「Military expenditure (current USD)」(SIPRI のデータ、CC BY 4.0)
STRATTACT編集部が公開資料をもとにまとめました(2026年10月17日更新)。AIを記事の執筆の補助で使用しています。
この記事の用語
- SIPRI(ストックホルム国際平和研究所)
- 1966年にスウェーデンで設立された研究所。
- 軍事支出(国防費)
- 国が軍事に使う支出。
- 軍事負担(対GDP比)
- 軍事支出が国内総生産(GDP)に占める割合。
- 防衛生産・技術基盤
- 防衛装備品を開発・生産・維持する企業と技術・人材の基盤。
- トレンド指標値(TIV)
- SIPRI が武器の移転の量を比べるために使う独自の単位。
- 統合防空ミサイル防衛(IAMD)
- 航空機・巡航ミサイル・弾道ミサイル・無人機などの空からの脅威に、センサーと迎撃手段を一体として対処する考え方。
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